「…電気、つけなくてもいい?」


すっぴんだし、泣いてヒドい顔になってるだろうし…と呟きながら鼻をすすり、大和にそう声をかけた。


雪奈の後ろからついてきて、リビングに入った大和は、


「いいですよ、つけなくて。」


と返すと、ヘルメットをゆっくりと床に置き、その上に軽く畳んだジャケットを置いた。


カーテンを開け、月明かりが射し込んでいる部屋の中。
ジーパンに、パーカー姿の大和が目の前にいる。


いつものスーツ姿とは違う大和を見て、雪奈の心臓がドキドキと脈打つ。


部屋の真ん中に立って、どうしようかと戸惑っている雪奈に、大和がゆっくりと近づいてきた。


雪奈のすぐそばまでくると、大和は少し上半身を屈めて、雪奈の耳元で囁いた。



「…抱きしめても、いいですか?」



鼓動が早くなるのを感じながら、雪奈はコクッと頷いた。


雪奈の背中に、ゆっくりと大和の腕が回り…

そのまま優しく、キュッと抱きしめられた。



一気に心臓の鼓動が高まる。



同時に、安心感に包まれ、また涙が溢れた。



「…二宮くん。」



「…ん?なんですか?」



雪奈を抱きしめたまま、大和が優しく聞き返す。



「…来てくれて、ありがと。」


そう言った瞬間、次々と涙が溢れ、嗚咽が漏れた。