結局、雪奈が会社を出たのは21時半。


連日の残業で、若干疲れが溜まっているような気がする。

重い体をおして、何とか電車に乗り込み、最寄駅まで移動した。


駅に着き、ぞろぞろと階段を降りる集団に混じって雪奈も階段を降りる。

改札を出るところで妙な勘が働き、視線を向けたその先には…怜が、いた。


怜はこちらに気づいていたようで、雪奈を見ると少しだけ頭を下げた。
そして、その横には…可愛らしい女性が立っていた。


──例の、新しい彼女なんだろうな。


その彼女は気づいていないようで、目線を戻した怜と会話を続けている。


──嫌なもの、見ちゃったな…。


こういう時、いいオンナというのは、素直に元カレの幸せを願ったりするものなのだろうか。


もはや怜のことを好きだという気持ちはなくなってしまったが、やはり裏切られたというショックは未だに拭いきれていない。


『浮気されて捨てられた、惨めな女』


自分をそんな風にしか評価できないのも悲しいが、事実は事実。


怜と新しい彼女が2人並んでいる様子を見て、ますますその実感が湧いてきて虚しさが増してきた。


よろよろしながら家まで辿り着き、なんとか寝る支度を済ませた。

布団に入ったが、怜のことを思い出してしまい、全然眠れそうにない。


ふと、窓の外が気になったので、ベッドから起き上がり、窓辺に近づいて静かにカーテンを開けた。



白く光る半月が、空に浮かんでいた。



そして…また今夜も、涙が溢れてきた。



惨め



虚しさ



この負の感情は、どうやったら拭えるのだろうか。



涙を拭っていると、布団の上に置いていたスマホが振動した。
通知ランプが点滅しているスマホにゆっくり近づいて画面を開いてみる。


大和からだ。