トレーを持ったままあたりを見回し、空いている席を探す。

社食の1番端、(まば)らにしか社員が座っていないスペース。

そのスペースの端の席まで近づくと、雪奈は足を止め、椅子に座った。


トレーに乗った丸皿に、サラダ。


──あ。ドレッシングかけてなかった…。


でも、ドレッシングすら、取りに行こうと思うほど、食べたい欲がわかない。


「雪奈さん」


声をかけられたので目線を上げた。

トレーを持った大和が、雪奈の正面に立って、こちらを見下ろしている。


「ここ、座っていいですか?」


雪奈の向かいの席だ。


雪奈がコクッと頷くと、
大和はトレーをテーブルに置いてから、席についた。


「昼めし、それだけですか?」


少し心配そうな表情で、大和が雪奈に尋ねる。


「うん。二宮くんは、ハンバーグ?いいね。」


「ん。結構腹減っててガッツリ食べたくて。てかサラダだけじゃ、力出ないでしょ。もう少し食べた方がいいですって!」


「う、うん…。でも食欲わかなくてさ。ドレッシングもかけ忘れたしどうしようかなって。」


ははっと笑ってみせると、大和はなんだか怒ったような表情を見せた。