「お疲れ様。いろいろ準備してくれてありがとう。」
蓮は心菜に心から礼を言う。

「片付けは俺がやるから、風呂に行ってきな。」

リビングに戻る廊下で不意に足を止めるから、
「いろいろ作ってくれたのは蓮さんの方だよ、ありがとう。」

心菜はそんな蓮の不器用な優しさが嬉しくて、父に歩み寄りを見せてくれた態度も愛おして、思わず振り返りざまにぎゅっと抱き付いてしまう。

「俺は何も出来ていない。心菜の方が父の事でいろいろ気を病んでくれただろ?」

心菜は首を横に振り、

「蓮さんの方が、きっと何倍も気を揉んだはず。これまでの分、お父様を受け入れるのに抵抗感だったあったでしょ?」

心配顔で蓮の顔を覗き込んでくる心菜に、フッと笑いかけ、

「俺は心菜が喜んでくれたならそれで良い。
親父との確執だって、今の自分にとって大した事ないと認識出来たし、有意義な時間だった。」

ふふふっと笑う心菜が眩しい。

「お風呂行って来るね。」
しばらく抱き合った後、スッと離れて行く温もりに、少しの寂しさを感じながら蓮は後片付けをと、キッチンに足を向ける。