ライアンは心菜との間にある、レジのカウンターに薔薇の花束を力無く置いて、大人しく蓮の後に着いて外に出る。

人目に付かないようビルの間の路地に移動し、蓮が足を止め振り返る。

「I was there when she was taken care of. Thank you .」
(彼女が世話になったと聞いた。ありがとう)

と、とりあえずの敬意を込めてライアンに伝える。

「What a thing, you're her fiancé.」
(君が彼女の婚約者だなんて、なんて事だ。)

その言葉が、ライアンの驚き全てを表していた。

『俺の事、知ってるんだな。
申し遅れましたが北條蓮と言います。』

日本人らしく頭を下げて、ライアンに手を差し出す。

ライアンは握手なんて交わすもんかと、恋敵に向かって睨みつける。

『ココがLAに来た時、本当に心も身体もボロボロだったんだ。いつ倒れてもおかしく無いくらい、顔色が悪くて見ているこっちがハラハラした。

なぜ、彼女が貴方から逃げてはるばる此処に来たのか、原因を聞く気は無いが…
なぜ、早く迎えに来なかったのかそれに対しては、一言、言わせてもらいたい。』

ここで初めて蓮のポーカーフィスが動く。
眉をしかめて唇を強く噛む。

『そうだな、早く迎えに来たかった。
何より俺が耐えられなかった。だが、彼女との連絡手段が断たれて、突き付けられた現実を全てクリアにしない限り、彼女には会えないと思ったんだ。そうしなければ彼女を幸せにしてあげられないと思った。』
蓮がポツポツと話し出す。