ぶつかった奴を見ると思わず息を呑んだ。
見たことない、同じ地球の人間だということに驚きそうなほどの美少女。絶世の美女だった。
でも、こういう奴ほど自分の容姿に華を持ち他人を無様に扱う。ぶつかったのだってわざとだろ。
「ご、ごめんなさい。私が周りをよく見ず走っちゃったせいで。大丈夫ですか?」
なるほどな。謝るふりをして内心喜んでいるんだろ。
望み通り俺も謝っておくか。
「あぁ、悪い。こっちこそよく見てなかった。けがしてないか?」
「大丈夫です。心配していただきありがとうございます。」
まだ、いい子ぶってるのか。適当に返事でもしておくか。
「あぁ。わりぃ。アクキー落としてる。」
どのメンバーのアクキーだ?女に人気なのは、りつだが。
「え?あ、ありがとうございます!」
そう言い手にとったアクキー。見てみると驚いた。
「っっそれ」
「へ?あ、はい。とうくんです。私の最推しです!(⌒∇⌒)」
何でそんなうれしそうに笑えるんだよ。ファンサも笑顔もない俺を推してどうすんだよ。
そんなことを思っていた俺は、うっかり言ってしまった。
「そんな奴、推しといて何がいいんだよ...」
あぁ、何言ってんだ俺こんなこと言ってもどうにかなるわけでもねぇのに。
「・・・そんな奴なんて言わないでください。」
「は?」
なんて言った。そんな奴なんて言わないでください?
「確かにとうくんは、ほかの人より冷たく感じますが、私は、自分らしくていいと思います。ただ、自分の意思をいうのが苦手なだけ。他人を優先しているだけ。動画を見てて、いつも思います。私は、そんなすごい人がそんな奴なんていわれるのが悲しいです。」
っっ何でわかるんだよ。確かに俺は、家のこととかで自分の感情や意思を押し殺して生きてきた。
俺を見て、わからねぇってことは、ライブに来たことがるわけじゃない。動画だけを見てきたんだ。
うれしい。こんなこと初めてだ。初めて俺を見てくれた。自分を見つけてくれた。
ずっとそんなことを思っていてくれたファンがいたんだ。
「っっわりぃ。」
「いえ。感情的になってすみません。そろそろ行きますね。ありがとうございました。」
そういって去っていった彼女。名前、聞いとけばよかったな。
こんな気持ち初めてだ。
あいつが欲しい。愛しい。
あぁ、俺。あいつのことが好きだ。