容姿も、学歴も、収入も、特に秀でたものはない。
ごく普通のどこにでもいるアラサー女性の私が、彼になにかしらのメリットを与えられているとは思えない。


しいて特別なものがあると言うのなら、幼なじみという関係性くらいだけれど……。

(でも、どう考えても結婚するほどのものじゃないし……)

誰が考えても、私と同じように思うだろう。


それ以外に思い当たるのは、体の関係を持ってしまったこと。
だからこそ、この結婚は妹のように接していた幼なじみを抱いてしまった樹くんの贖罪のように思えてきたのだ。


いっそのこと、『体の相性がよかったから』とでも言われていた方が、こんな風に悩まずに済んだかもしれない。
もっとも、樹くんに抱かれたあの夜、甘いキスや愛撫に翻弄されっ放しだった私とは違って、彼はどこか余裕そうだったけれど……。


「……って、相性ってなに! そんな変なこと、樹くんが考えるわけないし! 体の関係だって、あれきりなんだから!」


大きすぎる独り言が、やけに反響した。


一緒に住んでいても、結婚までしていても、私たちはキスすらしていない。
よく言えばプラトニック、あけすけに言えば〝契約結婚〟というところだ。