キーンコーンカーンコーン

「待ってた。」

「うん。」

とうとうこの時間が来てしまった。そう、二葉くんと話す時間。別に嫌なわけじゃないけれどこう言う雰囲気は苦手だ。

「ごめん、」

「え?」

「俺のせいだよな、嫌な思いさせてごめん。」

…なんて言えばいいんだろう。

「…悲しかった。」

なんて言えばいいかわからない。だけど、どんどん言葉が出てくる。勝手に。それと同時に雲がどんどん曇っていく。

「辛かった。」

「ごめん…。」

ポツポツ…

「なんで辛くなったか、もう一度教えて。」

その言葉を聞き、あぁ、悲しい理由がまだわからないんだ、と少し呆れた。

「なんで信じてくれないの。」

「…え?」

「彼女より、幼なじみ優先?」

もう耐えられなかった。

ザー

「そう言うつもりじゃ、」

「じゃあ、何?」

「信じられないんだ、俺が知ってる香菜と紗奈が言っている香菜は…全然違うから…」

「…、今は…二葉くんの顔、みたくない。」

ザー

二葉くんの歪んだ目を見てしまった…。けど本当のこと。今は二葉くんのこと、みたくない。

「はぁ、」

置いてきちゃった…またずぶ濡れだよ… 。

「紗奈」

振り向くと遊がいた。

「え、なんでいるの」

「二葉先輩に呼ばれてたから心配で。」

「あ、」

「待ってた。」

「…ありがとう。」

「ずぶ濡れじゃん。」

そう言いつつ、傘にいれてくれる遊。

そして、いつか言った言葉をまた口にした。

「俺んち、寄る?」