彼女は振り向いた。 俺を見つめ、少し下をみてまた顔をあげる。 最後にまた真っ直ぐな瞳で俺を見てから、また岡田に顔を向けた。 背中越しに息を小さく吸ったのがわかる。 聞きたい− でも− 時間が長く感じる。 「……うん。」 それはそれは今までで一番凛とした声だった。 −周りの声が聞こえない。 何度も何度も 頭で繰り返す。