どんな話をすればいいかわからなくて。
『私が相手じゃ、どうせ会話が続かない。お互い沈黙が辛くて、気まずい空気が流れるだけ。それなら最初から話さなければいい』
そう思って、駅に到着するまで隣に座る細田さんを見ることもせず。
長い前髪で視界を遮って、私はずっとヘッドフォンで音楽を聴いていた。
今思えば、私は最低だったと思う。
恩をあだで返したとは、こういうことだ。
陽キャの男女10人に絡まれたのは私。
細田さんは、全くもって無関係。
私せいでとばっちりを受けている被害者なんだ。
私が何とかしなきゃ!
細田さんを守らなきゃ!