修学旅行で私の心を救ってくれた細田さん。

彼女が今、窮地に追い込まれている。



私がお財布を盗んでいないと真実を話せば、今度は細田さんが集団いじめのターゲットになるだろう。



かといって心優しい細田さんのことだ。

『花園さんが私のお金を盗みました』なんてウソをついて、私を苦しめるようなことはきっとしない。




私はどうすればいい?

このまま黙って見ているだけ?

恐怖におびえながら椅子に座っている、細田さんのことを。



それとも……





私は立ち上がった。

教室の前から、一番後ろの細田さんの席まで足を進める。



修学旅行の新幹線の中で、私は細田さんにお礼を言えなかった。