女は紙袋を突き出した。
詩伊が受け取ったそれの中には、花柄の服が入っている。
「あれ、この生地…!」
「詩伊が誕生日プレゼントにくれたもの。せっかくだからワンピースにしてみたわ。詩伊に似合うと思うのよね」
「お姉ちゃん…ありがとうっ!」
頬に赤みを残して、にっこりと笑う顔はこれ以上ないほど可愛い。
それが俺に向いたものであればいいのに。
そんな気持ちが、詩伊の肩の下まである髪に手を伸ばした。
指に髪を絡めて遊べば、詩伊の視線は俺に向く。
「あなた達、仲良くするのはいいけど、まだ学生なんだから変なことがないように!」
「う、うんっ」
「あなたの親御さんには、あたしが詩伊の保護者として今度挨拶に行くわ」
「…俺に親はいない」