「い、一体何がっ!?」


「むぐー!」


「お姉ちゃん!?」




部屋から出てきたのは、ぴょこんと後ろ髪が跳ねた詩伊。

丸い目をさらに丸くして、パチパチと瞬きをしている。


可愛い。

寝癖まで可愛いってなんなんだ?




「や、弥斗(やと)さんっ、どうしたんですかっ?」




俺を上目遣いに見ながら走り寄ってくる詩伊へ、キスしたい衝動に駆られながら、女の口を塞ぐ手を離した。

逆の手で、傍に来た詩伊の肩を抱く。




「不審者だって騒ぐから、黙らせた」


「あんた何詩伊に触ってんのよ!離れなさい泥棒っ、大丈夫、詩伊!?」


「わっ、お姉ちゃん、あのねっ、弥斗さんは今一緒に住んでる人で、泥棒さんとかじゃないの!」




胸の前で必死に両手を振る詩伊を見ながら、マスクを下ろす。