「離してください!」

「暴れるな!」

「離してくれたら静かにします!」

「ッチ」




あ、舌打ちしましたよ。女の子を輝かせる商品を販売するブランドの社長が女の子に舌打ちしましたよ!と、彼と私しかいないこの空間では見事なまでに無力な訴え。




「あー、もう!うるさい」

「だって、佐倉さんが離してくれないから!」

「少しは大人しくしろ!」

「……うっ」




ぎゅっと、暴れる私の身体はすっぽり佐倉さんの腕の中に閉じ込められた。世間一般ではこれをハグって言うんだろう。

巻きついた佐倉さんの腕ががっちり、私をホールドして身動きが取れない。男と女の力の差をまざまざと突きつけられた。




「佐倉さん、苦しいです……」

「うるさいのが悪い」




全身、佐倉さんの体温に包まれて、冬なのにポカポカする。ふわり、香水かな。いい匂いがして、自分が女であることが恥ずかしくなった。


この人、絶対私より女子力高い。