「ーっ、ごめん」


「!」


「私、龍輝のこと、恋って意味では、好きになれない」


「……」


私が返事をした時、龍輝はそっと私とのおでこを離す。


沈黙の空気が流れる。


気まずい。けど、言わなくちゃ…!


「一瞬思ったよ、龍輝と恋したら、富谷先輩に恋するよりも幸せなんじゃないかって。


けど…っ、先輩といたら毎日会えることがすごく嬉しくて、


先輩がいるから毎日楽しくて、つらい思いもあるけど、


私今恋してるって思ってるのっ…だから、ごめんっ…」


「……そっか、じゃあ俺には隙なんてねぇってことか」


「ごめんね…っ、龍輝」


「いいよ。……じゃあその代わり、ぜってー先輩のこと振り向かせろよ?」


「振り向かすって…私全然脈ないよ…?」


先輩には、ずっと好きな人がいるってさっき言ったじゃん…。


……龍輝、さっきの話聞いてた?


「…それはどっかなー?自分の目でもう1回確かめに行ってこいよ。


俺の勘違いでまーた振られたら彩のこと貰ってやるから」


「何それ」


今振ったばっかりなのに、もう開き直ったの…!?


……けど、心強い幼馴染がいるってことは贅沢、なのかもしれない。


「ありがとう、龍輝…!私、先輩のところ行ってみる…!」


2年生の教室へ向かう校舎内を入る。


「…あーあ、フラれたな、俺。けっこーショックなんですけど。ま、頑張れよ、彩」


私の背中を温かい優しい目で見つめていた龍輝を私は知らなかった。