富谷先輩はすごい。


私、また先輩のこと好きになっちゃう。


「それが逆にムカついちゃったんだけどね。


惚れてんのは認めるけど、振り向かして“あたしは女の子”だよって思わせたい」


恋をすると、みんな“女の子”や“男の子”になる。


好きな人に振り向いて欲しくて、メイクをしたり、イメチェンしたり、勉強やスポーツを頑張ったりする。


私だってそうだ。


『富谷先輩、ナチュラルな大人っぽい人好きなんだって…!』


『あ、じゃあこんなコーデいいんじゃないかな?』


先輩に少しでもドキッてして欲しくて、先輩に“可愛い”って思ってほしくて。


1分1秒も無駄にしたくないから、毎日頑張ってるんだ。


ーーー先輩に好きになってもらいたいから。


「紗奈ちゃんってすごいね…!」


「彩ちゃんもだよ」


「えっ?」


「あたし毎日アピールして行ってるけどさ、富谷先輩、


話せばいつも彩ちゃん彩ちゃんだよ!あれ絶対彩ちゃんに惚れてるじゃん…!」


「えぇ…!?」


そんな。そんなことあるの?


だって、私フラれたし、ただの先輩後輩の付き合いでしかないんじゃっ…。


「ま、ともかく、お互いライバルだけど!正々堂々勝負ってとこだねっ!」


「紗奈ちゃん…」


「紗奈と彩ちゃんは、ライバルで、友達だねっ!えへへ」


ライバルで友達。


何だか心強い戦友だ。


「だねっ!」


紗奈ちゃんと友達になれて、よかったっ…!