9月。


2学期に入って、また富谷先輩に毎日会える!と思ってウキウキして喜んでいた私なんだけど……


私には今大大大ピンチが発生中です。


「櫂せんぱぁい、委員会のことでお話放課後話せますかぁ♡?」


「…放課後は無理、昼休みにしてくんない?」


「はぁい、じゃあ昼休みお迎え行きまぁす♡」


「結構です」


同じクラスでこの夏休み明けにやってきた転校生・橋本 紗奈(はしもと さな)ちゃん。


小柄でハーフヘアでピンクのセーターが似合っているとても可愛いらしい女の子。


転校初日から富谷先輩に目をつけて、翌日からは猛アタック。


今まで目立ったライバルはいなかったんだけど……


紗奈ちゃん登場で、いつも先回りされてるのか、私が先輩に近づけられなくなったのだ。


「先輩、つれないなぁ〜」


「さっさと帰れば?次の授業始まるよ」


「はぁい!」


2人のおしゃべりをぼんやり見つめる。


……お似合い、だな。


両手をグーにして顎にその手を重ね、


また来ま〜す♡と言って、自分の教室に戻って行った紗奈ちゃん。


私は紗奈ちゃんや富谷先輩にバレぬようひっそり隠れながら、紗奈ちゃんの背中を見送った。


「2人お似合いだったねっ!」


「それな?なんか可愛い」


そんな時、ひっそり2人を覗いてたとある2年生の女の子たちが、


私が考えていたことをそのままそっくり口を揃えて話していた。


「けど、櫂って好きな子いるんでしょー?」


思わず肩がビクッと驚くように震えた。


2学期に入って、突如流れてきた富谷先輩の噂。


これが、もう1つのピンチ。


だって…っ


「あー入学式に一目惚れしてずっと好きって奴〜?」


先輩には“入学式の頃からずっと好きな人”がいるんだから。


「そうそう!今まで“恋愛に興味ないから”って言って断ったくせに、突然何なのっての!」


「櫂に振り向かない女の子って、どんな子なんだろーね?」


「それなー?気になる〜」


やっぱり2年生の中でも有名なんだ。“富谷先輩の好きな人”。


………ねぇ、先輩。


私はこんなに先輩が大好きなのに、先輩は“好きな人”に一直線。


どうしたら、振り向いてくれるんですか…っ?