そして、あっという間に夕方。


お会計は富谷先輩が出してくれて、1度断りを入れたものの「今日俺に付き合ってくれた分だと思って」と言われ、私は仕方なくあっさり引いた。


先輩といっぱい話した。


そして私が知ってる先輩が増えた。


先輩は、おしゃべりする賢いインコを飼っていて、休日はバイトか柊先輩やクラスメイトと遊ぶんだとか。


そして、先輩はインテリアに関わるお仕事がしたいらしい、大学2年生のお兄ちゃんがいるらしく彼も元生徒会長。


兄弟揃ってすごいな〜って感心までした。


誕生日は5月11日。A型。好きな物はやはり甘いもの全般。特にこの店のケーキが好き。


普段クールだけど本当はよく笑う人。


たくさんたくさん知った。


けど、私聞けなかったことがあるんだ。


先輩は、どんな子がタイプですか?年下は恋愛対象になりますか?元カノはいましたか?


先輩にはーーー今好きな人がいますか?


しつこくて、めんどくさいのは分かってる。


でも、聞きたいんだ。先輩を知りたい。


けど、聞けなかったのはーーーーーー事実を知るのが怖いから。


「富谷先輩」


「ん?」


帰り道。途中まで方面が一緒で送ってくれる先輩と隣を歩いていた時、私は立ち止まる。


そして先輩はゆっくり私の方へ振り向く。


「先輩、はっ…」


先輩は、“私のことどう思ってるんですか?”と聞こうとするが、


「…っ、いえ、やっぱり何でもないです…!」


口を閉ざし、ニコッと愛想を浮かべるような笑顔を作る。


聞けない。


聞けるわけがない。


答えが、何となく分かるんだ。


“ただの後輩”って。


それを先輩の口から聞くなんて、出来ないよっ…。


「……そっか」


先輩はただ頷くだけの返事をした。


それからすぐに地元の駅に着いた。


私は先輩にありがとうございましたとお礼を言い、先輩も同じようにありがとうと言ってくれた。


家に帰ろうと足を運ぼうとするが、先輩を見送りたいがために振り向き、先輩の姿が見えなくなるまで先輩の背中を見つめる。


今日は、大好きな先輩をたくさん知れた日。


ーーーけど、これ以上踏み込むことをちょっと怖く思ってしまったのは、気のせいでありたい。


そう思った。