俺は花村家の前に立っている。
環奈の両親に会うのはパーティー以来だ。
会って話を聞いて欲しい旨を事前に連絡をしていた。
最初は渋っていたが、引かない俺に折れたようだった。

意を決してインターホンを押す。

出迎えてくれたのは母親だった。

「颯介君?」

「はい」

「本当にあの颯介君?」

「そうです。ご無沙汰しております」

「ひやぁぁぁぁぁっ! 」

「何だ騒々しい」

父親が奥から姿を見せた。

「お久しぶりです。本日は無理を言って申し訳ありません」

深く頭を下げた。

「颯介君、頭を上げて、ちゃんと顔を見せてくれないかな」

「はい」

俺はゆっくりと顔を上げた。

母親が何度も父親の肩を叩いている。

「痛い痛い、母さん、痛い」

「お、お、お父さん、颯介君、あの颯介君ですって!」

「そりゃそうだろう」

「モデルさんかもしれないじゃない!いいえ、俳優さんかも。イケメンの着ぐるみ?」

「母さん、さっきから何を言っとるんだ?」

「さぁ、こんなところでは何だ。上がってお茶でも飲まないか?」

「ありがとうございます」

俺は応接室に通されるや否や正座をし、深く頭を下げた。