嫌な夢は時折、菫を襲ってきた。自分が作り上げてきた人々との関係が崩れ落ちていく夢だ。



「菫ちゃんより、桜ちゃんの方がいいなぁ。」



「桜ちゃんの方が優しいし可愛いし魅力的。」



そんな声が耳に届く。みんなが自分から離れて行く。手を伸ばしても届かない。



……置いていかないで……




……独りにしないで……



そうみんなの背中に向かって、叫んだところで菫は必ず目を覚ました。


目を覚ましたら汗をビッチョリかいていて、頭がぼーっとした。



大丈夫。大丈夫。



おまじないのように、両手で頬を覆った。


ベッドから抜け出し、寝間着を脱ぎ捨てる。



モスグリーンのチェックのスカートに白のカッターシャツ、スカートとお揃いの色のリボンをつけて、紺のブレザーを羽織る。



いつもと同じ朝だ。



少し夢見が悪いだけ。



菫は仕上げに紺のハイソックスを履いて、階下に降りた。


階下からはお弁当用の唐揚げの匂いがしていた。