最初は父親の紹介のバイト先なんてと桜は思ってはいたが、店のマスターは優しく、慣れない桜に事細かに仕事を教えてくれた。


チェーン店の店とは違い細かいマニュアルなどはなかったので、マスターは桜に丁寧な言葉遣いで注文をとることと、お釣りを間違えないことだけを最初は気を付けたらいいよとも言ってくれた。


店は壁に古い洋画のポスターを貼ったり、棚にレコードを飾ったりしていて、昔を懐かしむ常連客も多かったので、桜の性格でもすぐに馴染むことができた。


常連客は桜の父親と変わらない年代の人も多く、桜が注文を取り間違えたりしても、怒ることなく、娘のように見守ってくれた。


ここの店にして良かった。働いて1ヶ月程だが、桜は心からそう思っていた。