桜がひとりでシャケの骨を丁寧に取り除いていると、


「何してんの?」


と、ベンチの隣に成海が腰を下ろしてきた。


「宮田くん……」


紙パックのコーヒーをストローで飲む成海がそこにいた。


「他の子達は?」

「ミーティング。ほら、私、運動部じゃないから。ご飯は味わって食べたいから、食べるのも遅いの。小さい頃もいつも居残り給食だったもん。」


わざと戯けて気にしてないふうを桜は装った。


「ふーん。」


成海は手に下げていたビニール袋から紙パックの苺ミルクを取り出し、桜に差し出した。


「あげる。」

「えっ?」

「いや、窓から神谷の後ろ姿が見えて、なんか心配になったから。元気づけるものないかなーと思って。」

「……。」


桜のシャケの骨をとる箸が止まった。目の奥がツンとなって、慌てて首を振った。


「苺ミルク嫌いだった?」

「……ううん。大好き。ありがとう。あ、でも私は元気だからね!」


桜は笑顔を作って苺ミルクを受け取ったが、成海には強がりだと気付かれているような気はした。