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 急いで萩恒家の本邸に向かった征雅は、勝手知ったる様で家に上がり込み、家の主を呼びつけた。
 出てきたのは、当主代理。崇史の叔父、佐寝蔵(さねくら)律次(りつじ)である。

 居丈高に現れた征雅に、律次は引きつった笑いを浮かべながら膝をつき、頭を下げる。

希海(のぞみ)を出せ」
「龍美様、そ、それは」
「いいから出さないか! お前がこうして居られるのは、誰のお陰だと思っている!」

 征雅が怒鳴りつけると、平伏して居た律次は肩を震わせた。
 律二がここに居られる理由。
 ――萩恒家の一族が、二人を残して根絶やしになった、その理由。

 征雅が暗に示したことに、律次は内心歯噛みしながら、笑顔で答える。

「勿論、忘れてはおりません。あの時の、ご恩は」
「ならば早くせぬか!」
「居ないのでございます」
「なんだと!?」

 目を向く征雅に、律二は青い顔をしながら告げた。