(結局、萩恒は残ってしまった。そして他ならぬ私が、異能の力を使えなくなるだと? そんなこと、許されるものか!)

 征雅は三週間前のことを必死に思い出す。
 何か、普段と違う事があったはずだ。
 誰かが、高貴なる彼に危害を加えたのだ。そうでなければ、征雅の体がおかしいということになってしまう。そんなことは、有って良いはずがない。有り得ない。

 ふと、ある声が脳裏に浮かぶ。

『こ、子狐、ちゃん?』
『きゅん!!』
『一体何を……』

(あの女……狐……? ……まさか!)

 この、内なる力が燃え尽きるような感覚は。
 そうだ。あの時、狐がいた。動物が異能の力を使うなど、聞いた事がない。だが、しかし。

「萩恒ぇ……っ!」

 征雅は、手から血を流すほどの勢いで、机を殴りつけた。