「おはよう綾乃さん。」
オフィスに着くと、同僚の由美(中井 由美)に話しかけられた。
「おはよう。今日機嫌いいね。何かあった?」
「気づいた?朝早くに起きて、時間あったからパンケーキつくってきたんだ。それが美味しくって。」
何気ない会話をして自分のデスクと向き合う。
「そういえば聞いた?浅山さん(浅山 透)と金山さん(金山 美紀)結婚するんだって。」
「嘘。知らなかった。」
最近、身近で結婚する人が増えている。
今私と話している由美も、既婚者なのだ。
「綾乃も結婚とか考えないの〜?もうすぐ31でしょ。」
「いまは独身でいいかな」
「え〜もったいない。綾乃容姿いいからモテるのに。」
自分で言うのもなんだけど、私はそこそこスタイルもいいし顔もいい。
だから、小さい頃から何度も告白されるが…
「恋愛に興味ないよ。」
「そう?けど男捕まえるなら今のうちね。職場の中でも、結婚していない男ってごく数人でしょ。」
確かに、言われてみれば社内で独身の人は少ないかも…
「ま、ちょっとは考えてみるよ。」
私は資料を持って立ち上がり、コピー機に移動する。
結婚か…親もうるさいし、もうそろそろ考えとこうかな…

『『ドン』』

「痛っ!」
考え事をしていると誰かとぶつかってしまい、とっさに声が出てしまった。
「わ、すいません。」
ぶつかった相手を見ると、それは裏で『鬼上司』とも言われている「高橋大翔」だった。
そいつの私を見下ろす目といったらもう……どこかに埋まりたい気分。
「えっと……私の不注意です。申し訳ございません。」
「謝罪なんぞ聞きたくない。邪魔だ。どけ。」
あまり鬼上司と関わりを持たなかったので怯えてしまった。
ひゃぁ……身長高!ガタイ良!怖!
怖気づいてる私を見ようともせず、ズカズカと歩いていった。
もう帰りたい…
デスクに戻り、あまり思い出さないようにしていたがだんだんと怒りが湧いてきた。
私が!謝罪してるにも関わらず!「邪魔だ、どけ」??上等だ!!上司だろうがなんだろうが関係ねぇ!!
私はできるだけ怒りを抑えたが、イライラしたまま仕事を続けた。