「おかえり! 早かったね?」




靴を脱ぎ終わった彼はその場に鞄をドサッと置くと、そのままスタスタと私に向かって来て、

ぎゅうっと私を抱き締めてしまう。




「ハムちゃんんん! 今日も一日お疲れ様ぁ〜〜♡」




吐息混じりで聞こえる愛情たっぷりの声。

私は力強く抱き締められたまま、なんとか声を出す。




「うぐっ……彰人もお疲れ様っ。今日もっと遅いかと思ってた」


「なんか鈴木課長の娘さんが帰って来るってなったみたいで、課長の権限で予定してた打合せ明日になったのぉ」


「そ……そうなんだ。
ねぇっ、そんな強く抱き締めたら服に化粧付いちゃうよ!?」


「いいよ〜。ハムちゃんの化粧ならいくらでも付けちゃって♡」




うりうりと頭を擦り付けてくる彰人に、私は完全にされるがままになる。





“須崎さんって付き合うとどんな感じになるの?”





この完璧な男、須崎彰人は

付き合うとデレデレで甘々な彼氏になるんです。



普段の姿から想像もつかないってほどではないけど、まさかここまで溺愛するタイプとはほとんどの人が思わないはず。


私もそうだった。



そして、彰人は2人だけになると私のことを“ハムちゃん”と呼んでいる。




「……あ、ごめん。ご飯作っておこうと思ったけどまだ何もできてない…」


「えぇー! 作ってくれようとしてただけで嬉しすぎる! ありがとハムちゃん♡

でもハムちゃん疲れてるだろうし、俺が作ろうか?」


「いやいや、彰人も疲れてるじゃん!
……あ、でも、私が作るより彰人が作った方が美味しいか……」


「ハムちゃんが作る料理が世界一美味しいよ♡ じゃ、今日は一緒に作ろっか」




むにむにっとほっぺたを引っ張って嬉しそうに笑う彰人。


あまりにも綺麗な顔が、これでもかってくらいゆるゆるに緩んでいる。



……ほんとに完璧だよ、この人は。