神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

仲間の幸福を守りたいとか、自分の幸福を優先したいとか。

そういう難しい理屈じゃなくて、俺はただ。

「…会いたい。ただ俺は…シルナに会いたい」

シルナが正しい道を踏み外し、邪神ごと「前の」俺を守ると決めたとき。

罪を犯してでも、俺と共に生きる覚悟を決めたとき。

シルナもきっと、今の俺と同じ気持ちだったんだろうな。

何が正しいとか、そうするべきだから、とかじゃなくて。

ただ、そうしたいと思ったから。 

ただ一緒に居たいと、そう願ったが故に。

覚悟も、責任も全部俺が背負う。

だから。

「戻りたい。会いたい。それが罪だと分かっていても…ただお前と一緒に居たいんだ」

これは、俺の意志。

「前の」俺に強制された訳でもない、紛れもない羽久・グラスフィアの思い。

その思いが、幻の世界に大きな亀裂を入れた。