熱々のコーヒーがジワリと体の中に染み渡っていくのがわかる。
内部から温かいものに包み込まれているようなこの感覚が好きだった。

「それにしても意外でしたぁ」
「意外?」

「私、てっきり先輩と谷川さんが付き合うものとばかり思ってたんで。それなのにふたりとも別の人といい感じになっちゃうからぁ」
突然俊介の名前を出されてむせてしまいそうになった。

「な、なに言ってるの。どうして俊介の名前がそこで出てくるわけ?」
「だって、幼馴染なんでしょう? 運命的な再開なんでしょう? それって絶対恋愛フラグじゃないですかぁ」

説明しながらも、自分の想像とは違う展開になっていることに不服そうな顔になっている。
「少女漫画の読みすぎじゃない?」

確かにこの会社で俊介と再開したときは驚いたし、懐かしくもあった。
だけどそれだけだ。
それ以上の関係になるなんて、ちょっと考えられない。

優莉奈はゆっくりと熱いコーヒーを飲み干してマイちゃんと共に部屋へ戻ったのだった。