道行く女性たちがみんな一樹を見ているような気がして、なんだかいたたまれない気持ちになってくる。
自分と一樹が並んでいるのを見て他の人たちはどう思ってるんだろう?

絶対、釣り合っているとは思われていなさそうだ。
自分に対する侮蔑の声が聞こえてきそうでこわい。
こんなこと考えても無駄なのに、どうしても気になってしまう。

「私のマンション、ここです」

灰色のマンション・ビルの前で立ち止まると一樹から手を離した。
少し寂しい気もしたけれど、安堵している自分もいる。

一樹と一緒にいるとまだまだ緊張し通しだ。
「それじゃまた明日」

一樹はそのまま手を振って帰っていった。
一瞬部屋に上がると言われるかもしれないと思っていたので、そこでも安堵した。

「あぁ、疲れたぁ」