自分は飲み会の席で酔いつぶれたことはもう遠い過去のことなんだろう。
「名前を呼び間違えた」

うわ、最悪。
それはデートで最もやらかしてはいけないこと。

なにを言い訳したって相手から絶対に嫌われてしまうこと。
「うわ、最悪」

優莉奈が心の中で思ったことをマイちゃんは容赦なく口に出す。
傷ついた顔で天井を見上げ、涙がこぼれないように必死に我慢している俊介。

申し訳ないけれど、優莉奈から掛ける言葉はみつからなかった。
「で、誰の名前を呼んだんですかぁ?」

マイちゃん、お願いだからこれ以上は踏み込まないであげて。
心の中でそう思いながらも実は気になるところだから、止めないでおいた。

「もしかしてアニメキャラとかだったりしますぅ? だとしたら相手に同じ趣味があればセーフですけどぉ、まぁ梓さんは無理ですかねぇ?」

慰めたいのか突き落としたいのかわからないセリフだ。