強烈なカウンターを喰らい、顔を上げた。
 社内恋愛を実らせ、昇進もした男に論破される痛みで表情が歪む。

「僕、君と仲良くは出来なそうだな。君が嫌いだ」

「えぇ! そんなこと言わないで下さいよ! 結婚式のスピーチは部長に頼もうと思ってるんですから。なにせ部長のお陰で俺は妻と結ばれたようなもの。部下を取られまいと牽制されてた日々が今となっては良い思い出です」

 つまり、これはやり返しているのだろう。やっと朝霧の腹の中が読めてきた。

「手塩にかけて育てた部下を社内の男、僕より仕事が出来ない奴に持っていかれるのが嫌だったんだ。君の奥さんに恋愛感情はない」

「ちなみに部長より偉い立場となると、社長や役員しか対象になりませんが?」

「まぁ、そうなるね。朝霧の場合、部長同士だからギリギリセーフか」

「……あぁ、岡崎先輩、可哀想。社内恋愛するなら相手は部長しか居ないなんて。先程の会議のメンバー、部長以外全員が妻帯者ですよ?」

「何故、可哀想? 社外でパートナーを作れはいいだけだろう? もしくは、どうしても社内恋愛したいなら僕を選べばいい。僕じゃ岡崎の相手は不足かな?」

「不足かって? 俺に聞かれましても知りませんよ」