目が覚めると、カーテンの隙間からは日差しが差し込んでいた。
あれ? 何時だろう...
柊哉さんがお仕事に行く時に行ってらっしゃいをしようと思っていたのに、すっかり眠ってしまっていたみたい。
スマホを探すと、枕元にお水のペットボトルと薬と一緒に並べて置いてあった。
11:25⁉︎ もうお昼だ...
三十分ほど前に柊哉さんからメッセージが届いていて、これから三時間ほどオペに入るけど変わりはないかという内容だった。
きっともうメッセージを見られる状態ではないと思うけれど、一応すぐに大丈夫ですと返信しておく。
ご飯を食べて薬も飲まないと。キッチンへ行くと、小鍋の中に卵粥が入っていた。
柊哉さん...朝からお仕事だったのに申し訳ない。
あまりお腹は空いていなかったけれど、半分ほどお皿によそって温める。
誰かにお粥を作ってもらうなんて、いつ振りだろう...。
冷ましながら少しずつ口に入れると、卵の風味と出汁の優しい味が身体に沁みていく。
美味しい...。今朝も一緒にいたのに、一人で食べていると寂しくなってきた。
何時に帰ってくるのかな?早く会いたい。
まさか私がこんなにも誰かを好きになれるなんて、自分でも少し驚いている。
本当の婚約者になって欲しいと言ってもらえた時は、嬉しくて嬉しくて自然と涙が流れていた。
こんなに本気で誰かを好きだと、愛おしいと心から溢れ出したのは、生まれて初めて。
もちろん、院長が認めてくれるかは分からないし、釣り合っていない事も分かっている。
こんなに好きになってしまって、もしお別れする事になったら...とどうしてもいつもの癖で色々と考えてしまうけれど、その度に麻美に言われた言葉を思い出す。
始めから終わりを決めつけていちゃだめ。自分から幸せになる努力をしないと。
もっともっと先生に好きになってもらえたら、ずっと一緒にいてくれるのかな...?そのためには何をしたらいいんだろう...?
食器を片付けて、軽く掃除や洗濯などの家事をしながら考えていたけれど、具体的な妙案は浮かんでこない。
そのうえ、なんだか動いたらまた身体が重だるくなってきたのでベッドに戻る事にした。
そういえば、熱はどれくらいあったんだろう。38度超えてるって言っていたけど、やっぱりまだあるのかな?
柊哉さん、何時に帰ってくるのかな。朝は寝起きのまどろみの中ぎゅっとして背中を撫でてもらって、身体はだるかったけどすごく幸せだった。
でも、体温計を見た途端にお医者さんの顔に変わったというか、空気が変わったようだった。
柊哉さんがお医者さんなのはもちろん分かっているけれど...病院と家にいる時の姿はだいぶ雰囲気が違うから、なんだか少し寂しかったな...。
それに、家で聴診されるとは思っていなかったのですごくドキドキして、その音を聞かれていると思うと余計に恥ずかしかった...。
はぁ、早く熱下がらないかな...