「いつも思うけど、毎日ちゃんとお弁当作ってきて本当にえらいわよね。しかも見た目も綺麗で美味しそうだし!優茉ちゃんはいい奥さんになるわ」
「いえいえ、いつも昨夜の残り物を詰めてきてるだけですから。それに作れるものは和食ばかりなので、もっとおしゃれなお料理も作れるようになりたいんですけど...」
「それだけ作れたら十分よ!私なんて未だに毎日レシピサイト検索して簡単に作れそうなものばっかりよ。それに、時間がある時は旦那に任せちゃうわ。その方が美味しいしね」
天宮さんは脳外の前は呼吸器内科でクラークをされていたそうで、そこで出会ったドクターの旦那さんと去年結婚されて幸せな家庭を築いている。
旦那さんは忙しい中でもお料理や家事など率先してやってくれるそうで、とても素敵なご夫婦だなぁと話を聞いていていつも思う。
「ふふっ、本当に素敵な旦那様ですね」
「優茉ちゃんは?本当に彼氏いないの?絶対モテるでしょ?」
「いえいえ、全くそんな事ありませんし彼氏もいません」
ガタンッ
「へえ、宮野さんフリーなんだ!可愛いし絶対彼氏いると思ってた」
そう言いながら私たちと同じテーブルに座って日替わり定食の親子丼を食べ始めたのは、同じ脳外の男性看護師である風見さん。
「風見くん、せっかく女子トークしてたのに!席ならまだ向こうも空いてるわよー」
「いいじゃないですかー、僕も混ぜてくださいよ女子トーク!」
風見さんは私と同い年で二年前から脳外で働いているそう。
ふわっとした微かに茶色い髪の毛に、くりっとした大きな瞳。女の私から見ても可愛いと思う甘い顔立ちの風見さんは、仕事も一生懸命で看護師さん達だけでなく先生達にも可愛がられている。
「で?宮野さん本当に今彼氏いないの?」
もぐもぐ食べながらも、すっかり話に入っている様子。
「本当ですよ。今というか...しばらくそうゆう人はいません」
あまり恋愛経験のない私は、いわゆる恋バナというものについていけない。
好きになった人もいたけれど、お付き合いを始めて幸せだなぁと感じると、同時に何故か急に怖くなってしまう。
幸せを感じるほど、それに比例して漠然とした恐怖感も増していき、自分からお別れする事が多く、上手くいかなかった。
何度か恋愛はしたものの、どれもその得体の知れない恐怖感から、本気で相手を好きにはなれない。
私に恋愛は向いていないのだと、過去の経験でよくわかった。
「じゃあ、ずっと一途に想い続けてる人がいるとか?」
「いえ、そうゆうわけでもないんです...
ただ、私には恋愛はあまり向いていないようなので」
いつも恋バナになると、こう答えてしまう。
面白い話の一つでも出来ればいいのだけれど、あいにくお話しできるほど深い付き合いをした事はない。そのうえ、この恐怖感は共感してもらえた事がないので、最近では話すこともやめている。
「ふぅーん、そうなの?でも優茉ちゃんは、控えめだけどしっかりしてるし可愛いし絶対いい奥さんになると思うけどなー」