柊哉side

 また少し強引に優茉を言いくるめてしまったかな...。

 距離を縮める為にも同じ部屋で眠りたいと思っていた俺は、あえて直前まで寝室のことは話題に出さなかった。初めに案内しなかったのも、本当に忘れていた訳ではない。

 優茉が素直に俺の話を受け入れてくれるのをいい事に、それらしい理由を付け足せば彼女は戸惑いながらも頷いてくれた。
 例え父親が来たとしても、寝室までは普通見ないよな...と今さら俺は何を言っているのだろうと思ったが、優茉が納得してくれたから良いことにしよう。

 彼女の気が変わらないうちにとすぐに寝室を出てリビングに戻り、再びタブレットをひらく。きっと俺がいたら寝付けないだろうから、優茉が眠った頃にベッドに入ろう。

 そう決めて論文に集中し読み更けていると、気がつけば時計は夜中の一時を指していた。

 そろそろいいかな?寝支度をしてそっと寝室のドアを開けて様子をみる。
 ライトが付いたままになっていたので、もしかしてまだ起きていたのか?と思ったが、反応がないので右の端っこで毛布に包まっている優茉を覗き込む。

 すると、すーすーと規則正しい寝息が聞こえて安心した。
 寝落ちしたようで、顔の横に置かれたままになっている本をベッドボードにおきライトを消す。

 二十七歳にしてはあどけなさが残る素顔。口元が緩んだ無防備な寝顔に、なぜか胸の奥がギュッと掴まれたような感覚がした。
 思わずじっと見つめてしまい、気がつけばそっと頭を撫でていた。