先生の協力もあり、初めての場所でも滞りなく料理をすることができた。ハンバーグもいい感じに焼き上がったので大葉と大根おろしをのせ、最後にご飯をよそって四人かけの食卓テーブルへと運ぶ。

 二人で「いただきます」と手を合わせて食べ始めると、先生は箸の持ち方や食べ方も綺麗で、またつい見つめてしまった。

 「どれもすごく美味しい!ハンバーグもふわふわだし、味付けが優しくて俺の好みだよ」とまた先程の笑顔で言われ、ドキッとしてしまいそれがバレないよう慌てて私も食べ始めた。

 「よ、よかったです。私が作るなんて言っておきながら、たくさん手伝って頂いてすみません。でも、誰かとお料理をする事も、スーパーで一緒にお買い物をする事もとても久しぶりで、なんだか楽しかったです」

 そう言うと、先生は優しく微笑んでくれる。

 「俺も楽しかったよ。それに、誰かが作ってくれた手料理を食べるのなんていつぶりかわからない。心まで癒されたよ」

 「あの、朝ごはんやお昼はいつもどうされているんですか?この間は、おにぎりだけでしたよね?」

 「ああ、あまり食にこだわりはなくてね。忙しいとパッと食べられるおにぎりやサンドイッチばかりになっているな。朝は時間があればコーヒーを飲むくらいで、あまり食べていないかな」

 この間、長時間のオペの後先生が過労で倒れたと聞いた。みんなが噂をしていたのを耳にしただけだったけれど、眩暈がして休んでいたのは本当みたいだし、あまりきちんと食べていないのも原因なのでは...?

 それにしても、さすがにお弁当を作るのは出しゃばりすぎかな?でもあの笑顔が嘘とは思えない。本当に喜んでくれているように見えた。
 それにどうせ自分の分は作るわけだし、私がいる間くらいしっかり栄養のある物を食べてもらいたいな...。少し迷ったけれど、思い切って提案してみる事にした。

 「あの、もしご迷惑でなければ朝ごはんとお昼のお弁当も作りましょうか...?私はいつも作っているので、一人分を作るのも二人分を作るのも変わらないですし...」

 すると先生は少し驚いたような、困っているようにも見えて、やっぱり調子に乗りすぎたとすぐに言い直そうとすると...

 「俺はすごく嬉しいけど、本当に優茉の負担にならない?お弁当までお願いするのはさすがに大変じゃないか?」

 「いえ、大丈夫です!でも、前日の延長のようなおかずとかそんな感じですけど、それでも良ければ...」

 「ありがとう、でも本当に無理はしないで。優茉も仕事をしているんだし、大変な時は作らないでほしい。夕飯も俺が何か買ってくるから」

 「わかりました」

 提案を受け入れてもらえたことも、先生の気遣いもとても嬉しかった。誰かのためにお料理をする事も初めてだけど、美味しそうに食べてもらえるってこんなに嬉しいものなんだ。

 でも、ご実家も病院のすぐ近くのはずだけれど、帰られたりしないのかな?
 手料理が久しぶりって言っていたけれど、お母様はあまりお料理をされない方なのかな?