そんな日々が一ヶ月ほど続き、外の空気はすっかり秋らしくなってきたある日。
午前中はいつものように退院に関する事務処理や書類作成などを担当して、天宮さんが戻り交代で休憩に入ろうとしていた時のこと。
「あっ!ごめん、優茉ちゃん休憩入るのちょっとだけ待ってくれる?」
「はい、どうかしました?」
「この書類、私が休憩に入る時に院長室に持って行こうと思ってて忘れていたの」
「私で良ければ届けますよ。院長室に持って行くだけでいいんですか?」
「本当?そうしてもらえると助かる、ごめんね!院長に頼まれていた書類だから、渡すだけでわかると思うの」
「わかりました。じゃあ届けてから、そのまま休憩行ってきますね」
「ごめんね優茉ちゃん、ありがとう!」
柊哉side
彼女が退院してから一ヶ月ほど経ったが、あれから忙しくなりタイミングが合わず、一度も病室には行けなかった。
俺はほぼ毎日オペが続き、彼女との接点はあまりないが、この一ヶ月で彼女の人となりはだいぶ見えた。
検査室まで患者さんを送る時、にっこりと優しく微笑み熱心に話を聞いている姿。
麻痺が残る患者さんが負担にならないよう、支えながらゆっくりと寄り添って歩く姿。
お見舞いにきた家族の子どもに、膝をついて目線を合わせ元気付けている姿。
そして一緒に働くスタッフからも、彼女の働きぶりに信頼をよせていることがよく伝わってきた。
あれから俺は彼女を見かけるたび、自然と目で追ってしまっている。
...俺は一体何がしたいんだ?
あの時の女の子だと確信してから、気になって仕方がないのは確かだ。でも、それがどういう感情から来るものなのかは、自分でもよく分からずにいた。