その後もしばし二人で頬を赤らめながら見つめ合ってしまい「そろそろ行きますよ!」という声に促されリムジンに乗り込んだ。

 部屋からリムジンへ向かう道中、ホテルの方やたくさんの人に「Congratulations!」と拍手をもらい少し恥ずかしかったけれど、温かい雰囲気に包まれとても幸せだった。

 チャペルまでは二十分ほど。車内では、緊張からか冷たくなっていた私の手を柊哉さんがずっと温めてくれていた。

 「優茉、深呼吸して?何も心配しなくて大丈夫だよ。せっかくだし、雰囲気を目一杯楽しもう?」

 「そうですね、一生に一度ですし楽しみましょう」

 「俺はもう、こんなに綺麗なドレス姿が見られただけで満足してる。キスしたいけど、メイクが崩れるといけないから我慢するよ」

 そう言って手の甲にちゅっとキスをして、いつもの数倍甘さを含んだ瞳で見つめられると、落ち着いてきた心臓がまたドクンっと暴れだす。

 なんとかそれを落ち着かせていると、あっという間にチャペルに到着し、そこからは写真撮影が始まり忙しかった。
 様々なポーズを求められ、ぎこちないながらもなんとか応えながら一旦撮影を終える。

 控え室へ入るとここからは式まで別々になるため、柊哉さんはこめかみにキスを落とすと「待ってるからね」と甘い声を残して出ていき、彼と入れ違いに私のお父さんが入ってきた。

 少し照れくさかったけれど立ち上がってドレス姿を見せると、お父さんの目からは途端にポロポロと涙が溢れ始めハンカチでそれを拭っている。

 「お父さん...?」

 「優茉...とても綺麗だよ。優佳に...お母さんに、そっくりだ」

 そう言葉を絞り出して涙を拭う姿に、私もじわじわと視界が歪んできて涙を堪えるのに必死だった。

 外にあるチャペルの入り口にスタンバイし、お父さんの腕に手をかける。少し見上げると、雲一つない綺麗な青空が広がっていた。

 「...お母さんも、見てくれているかな?」

 「ああ、もちろん見ているさ。優茉が空を見上げた時は、お母さんもいつも見ているんだよ」

 「お父さん...、ありがとう」

 「ははっ、こんなに涙が出るとは思わなかったな。...優佳、夢が叶ったな」

 「えっ...?」

 「そのネックレス、おばあちゃんにもらった物だろう?つけてくれて、ありがとう。お母さんもきっと喜んでいるよ」

 そっとネックレスに触れ涙を拭うと、声がかかりバーンと勢いよくバージンロードへと続く扉が開かれた。