薄暗い部屋で目を凝らして時計を探すと、まだ四時を過ぎたところ。

 それでも、スッキリと目が覚めてしまったので彼を起こさないようそっとベッドを抜けてリビングへ行く。
 今日はついに結婚式... そう思うと今からドキドキと緊張してくる。

 それを誤魔化す為にも、昨日そのまま寝てしまったので、顔にパックをしながらむくみを取るために脚からマッサージを始める。
 髪の毛も昨日はケア出来なかったので、バスルームへ行きヘアパックをしていると、突然ガラッと扉が開き驚いた。

 「優茉、おはよう。どこに行っちゃったのかと思った...」

 そう言いながらぎゅっと抱きしめられ、バスローブは着ているけれど、その下は何も身につけていないのでドキッとした。

 「おはよう、ございます。起こしちゃいましたか? あの、昨日そのまま寝てしまったので、髪の毛のケアをしていて...」

 「そっか、ごめんね。昨日お風呂でそのまま寝ちゃったからね」

 分かっていたけれど、改めて言葉にされるとじわじわと顔に熱が集まる...。とにかく、まだ早いので柊哉さんにはもう少し休んでいてもらい、シャワーを浴びて足先までしっかりボディクリームと日焼け止めを塗った。

 バスルームから出ると、コーヒーのいい香りが漂っている。ソファに座って景色を眺めている彼に近づくと「優茉は紅茶ね」と私の分のティーカップを手渡してくれた。

 「わぁ、いい香り!ありがとうございます」

 「スベスベだね」

 そう言いながら私の肌や髪の毛に触れ、そこに唇をつける。「優茉の方がいい香りがする」とカップを置いて膝に乗せられ、髪を撫でながら抱きしめられた。
 ハワイに来てからは、いつもに増して柊哉さんの言動は甘いけれど、今日はまた格別な気がする。

 「結婚式、楽しみだね。また二人の幸せな思い出が増えるね」

 「ふふっ、そうですね。ちょっと緊張しますけど、楽しみです」

 「じゃあ、式に備えて朝ごはん食べようか。今日は何が食べたい?」

 「えっと...、なんだかあまり空腹は感じていなくて...」

 「でも何か食べないと。プランナーさんも言ってたでしょ?暑い中でドレスを着るのは体力がいるから、しっかり食べておいてくださいって」

 「そ、そうでしたね...。えっと、じゃあフルーツとかサラダとかあっさりめのものがいいです」

 そんな私の希望で、下のフロアにあるレストランへ行くことになり、彼もさっとシャワーを浴びてから二人で降りた。

 まだ少し朝食には早い時間帯なのであまり人は居らず、パイナップルやオレンジなど甘いフルーツと紅茶を堪能しながらゆっくりと過ごした。
 結局「ちゃんと炭水化物も摂らないと」と言う柊哉さんに促され、シェアしながらパンやスープ、デザートにチーズケーキまでいただいた。

 「よかった、たくさん食べられて」

 「はい、どれも美味しくて食べられちゃいました」

 部屋へと戻ると、時刻はまだ八時前。十時にメイクさん達が来て、この部屋で支度を済ませてチャペルへと向かう予定だ。

 「優茉、まだ時間があるからゆっくりしよう?」

 手を引かれてベッドルームへと行き、二人でごろんと横になる。部屋には温かい日差しが入り、お腹は程よく満たされとても心地がいい。それに加えて、大好きな手でふわふわと優しく頭を撫でられれば、あっという間に微睡に包まれた。