空港に降り立つと、日本とは違う爽やかな暑さとふわっと鼻を掠めるココナッツのような香りで、ハワイに来られた事を実感し胸が高鳴る。

 迎えに指定された場所へ向かうと、そこには真っ白なリムジンが停車している。

 まさか...これに?

 そう思っていると、運転席から降りてきた男性は「アロハー!」と陽気な挨拶をしながら近づいてきて、Congratulations!とプルメリアで作られたレイを私たちにかけてくれた。

 柊哉さんが彼と握手をしながら挨拶を交わし、荷物を乗せてもらっている。

 「優茉、乗って?今回の移動は全部この車だよ」

 「えっ?...リムジンなんて、初めて見ました」
 
 「ふふっ、どうぞ?優茉お嬢様」

 そうおどけながら差し出された右手を取って、車に乗り込むと広い車内にはシャンパンが用意されている。
 なんだか、ドラマや小説の世界みたい...。あまりの非日常感に、ずっと夢の中にいるようなふわふわとした気分だった。


 三十分ほどでワイキキ市内に到着し、ガイドブックで何度も見た街並みが広がる。

 今日はこの後現地での最終打ち合わせがある為、一旦荷物をホテルに預けてから向かう事にした。

 柊哉さんが予約してくれていたのは、パンフレットの表紙に載っているような誰もが知る有名なホテル。ロビーはラグジュアリーでありながらも、南国の雰囲気を味わえる作りとなっていてとても素敵だった。

 チェックインし案内されたのは、広々としたスイートルーム。そして窓からは、一面に輝く海がどこまでも広がっている。

 「とっても素敵なお部屋...。柊哉さん、ありがとうございます」

 「結婚式もハネムーンも、一生に一度だから。一緒に幸せな思い出にしようね」

 後ろからハグされながら、今この瞬間の幸せに浸り、しばらく窓からの景色を楽しんでいた。


 さっそく海辺に出たいところだけど、この後は打ち合わせがあり挙式は二日後。
 なので、式が終わるまではなるべく肌も焼けないように気をつけ、ゆっくりと過ごそうと決めていた。

 ホテルでしばし休憩をしてから、すぐ近くにあるブライダルショップへと向かう。
 衣装や靴、小物など様々な確認作業をして、最後に挙式での流れの説明を受けた。

 現地でリハーサルなどは出来ていない為、映像を見せてもらいイメージを膨らませるが、想像以上に段取りや手順が沢山あり、きちんと出来るかな?と今から少し緊張してくる。
 それでも、いよいよだなぁと今までの長い準備期間を思い出すと、感慨深いものがあった。

 二時間ほどで打ち合わせを終え、あとは当日の本番を迎えるのみ。


 外に出るとちょうどサンセットが綺麗に見える時間帯になっており、たくさんの人たちが海辺で幻想的な風景を楽しんでいる。
 私たちも浜辺に近づき、大きなオレンジ色の太陽がゆっくりと海へと沈んでいく様を、手を繋いで眺めていた。

 不思議とここでは時間がゆっくりと流れているように感じられ、日々の喧騒とはかけ離れた、まさに非日常の空間。
 日頃の忙しさや小さな悩み事も、全て消し去ってくれるよう。