「優茉ちゃん、次何飲む?」
柊哉さんが電話をしに外に出ると、相馬さんがニコニコしながら尋ねてくる。
「えっと...」
先程のカクテルがとても美味しかったのでまだ飲みたい気持ちはあるけれど、柊哉さんに怒られるかな...?
「伊織、あんまり飲ませたら柊哉に怒られるぞ」
「大丈夫だよ!今日はお祝いなんだから特別だよねー?それに柊哉も居るんだし、多少優茉ちゃんが酔っちゃっても大丈夫でしょ?
紅茶とか好き?ダージリンクーラーとかどう?これなら度数低いし」
「紅茶?大好きです!」
「じゃあこれに決まりね!」と空いたグラスを持ってすぐにカウンターの方へと行ってしまった。
「ねえ、優茉ちゃんって酔うとどうなるの?」
「私、記憶がなくなってしまうみたいで...。この間もほとんど覚えていないんですけど、柊哉さんによると幼い感じだったと...」
「もっと可愛くなっちゃうんだ!ちなみにそれって柊哉が迎えに行った時?」
「はい、そうです」
「その時のこと何にも覚えてないの?例えば、柊哉に何かされたとか」
「おい、お前何聞こうとしてんだ?」
「だって気になるじゃん?あの後勢いで抱いちゃったのかなぁって」
「ぐふっ、げほっげほっ」
だっ、抱く⁈ 突然飛び出した思いもよらない単語にお水を吹き出しそうになってしまった。
「ごめんごめん!大丈夫?いや、この前柊哉悩んでたから。どうなったのかなぁって気になっちゃって」
な、悩んでた...?
元々アルコールのせいで少し頬が熱かったけれど、耳まで熱くなってきた。
「お前なぁ...。セクハラで訴えられるぞ」
「ごめんね?でもその様子だと、あの時はしてないけど、その後ちゃんとしたって感じだね!
ふふっ、そうだ!ちょっと待ってて」
そう言いながら席を立ち、カウンターでお酒を作っているマスターに何かを耳打ちしてすぐに戻ってきた。
「おい伊織、お前悪い顔してるぞ?なんか企んでるだろ?」
「まさかー、俺が弁護士なの忘れた?悪い事なんて企んでないって!」
「はぁ、お前マジで柊哉に怒られても知らねぇからな」
何の話かはわからなかったけど、そんな事はあまり気にならないくらい、先程までの話が恥ずかしくて顔を上げられない。
「ふふっ、優茉ちゃんに一ついい事教えてあげる!」
そう言って今度は私の隣に座り、ひそひそ話をするように口元に手を当てて、私にしか聞こえない小さな声で囁く。
「柊哉って意外と攻められるのも好きだと思うよ!たまにはいつもと違う愛情表現をすると、きっと喜んでくれるよ!」
っえ?せ、攻める...ってそう言う意味、だよね...?
ぶわぁっと顔が熱くなるのを感じて、顔を隠すようにして俯く。
そしてそれを誤魔化すように、運ばれてきたカクテルに口をつけた。
そんな私を見てとても楽しそうにしている相馬さんと、呆れている堂上さん。
全く正反対で、二人が仲良しなのが見ていて不思議なほどだ。