柊哉side

 俺の親友達と仲良く話をする優茉を見ていると、嬉しくて自然と頬が緩む。
 二人に冷やかされても、もう翔と伊織には全てを曝け出しているし全く気にならない。

 昔の俺からは想像出来ないだろう言葉や行動に、珍しそうにニヤニヤしていたけれど、俺たちを見つめる二人の目は優しかった。

 久しぶりのアルコールに、少し酔いがまわっているのを自覚し始めた頃、俺のスマホが着信を知らせる。

 「ごめん、ちょっと外で話してくる」

 電話の相手は、白河院長の娘の紗江だった。親同士仲が良かった為、昔何度か顔を合わせた事があり、この間白河病院で仕事をしていた時は何度も食事に誘われた。

 どんな要件かはわからないが、すぐ隣の優茉に女性の声が聞こえるのは良くないと思い外に出る事にした。

 「行ってらっしゃーい」とのんびりした口調で手を振る伊織も、珍しく酔っているようだ。

 俺の言い付け通り少しずつ甘いカクテルを飲んでいた優茉は、ほんのり頬が赤い程度で酔っている様子はなかったので、置いて行っても大丈夫だろうと思っていた。


 外に出てから、一度切れた電話にかけ直すとすぐに高い声が聞こえてくる。

 「もしもし?どうした?」

 「どうしたじゃないです!結婚されたって本当ですか⁈ 私全く知らなかったんですけど!」

 「ああ、本当だよ。別にわざわざ紗江に伝える事でもないと思ったから」

 「さっき父から聞きました。ひどいです!どうして婚約者がいる事言ってくれなかったんですか⁈ 私、何度も食事に誘ったのに...」

 あれはそういう意味での誘いだったのか。俺にとって紗江は妹のような感覚だし、彼女も兄弟はいないので兄のような感じで慕ってくれているのかと思っていたが...。
 まぁ、そもそもあの時はそんな事を考える余裕もなかったのだけど。

 「紗江、酔っているんだろう?ほどほどにしておけよ。じゃあな」

 早々に電話を切ろうとする俺に、彼女は待って下さい!と叫ぶ。
 そして、本当は昔からずっと好きだったと語りだしたのを無下にも出来ず、とりあえず彼女の気が済むまで話を聞く事にした。

 結局十分近く酔った勢いで言いたい事を言った挙句、泣き出した彼女をなんとか宥めて電話を切った。

 はぁ、程よく酔いが回り気分が良くなっていたのに、おかげですっかり冷めてしまった。