お店に到着し中に入ると、柊哉さんは店員さんと気さくに挨拶を交わしている。
 妻ですと紹介されたので、私も軽く頭を下げてご挨拶させてもらった。

 いつもはカウンターに座ることが多いみたいだけれど、今日は四人いるのでテーブル席を案内してもらうとそこには、前に一度だけお会いした相馬さんの姿があった。

 「あっ、待ってたよ!柊哉も優茉ちゃんも久しぶりー」

 以前の印象と変わらず、可愛らしい笑顔で手を振っている。

 「ご無沙汰しております」

 ぺこっと頭を下げると、柊哉さんに腰を抱かれて引き寄せられる。

 「伊織久しぶり。あの時は色々迷惑かけたな」

 「本当だよー、心配したんだから!でも二人が無事に結婚できて何よりだよ。本当におめでとう!」

 「ありがとうございます」

 「ふふっ、なに?柊哉。まさかそうやってずっと優茉ちゃんのこと抱き寄せてる気?
 俺らが柊哉の奥さんに何かする訳ないでしょ?安心して二人とも座りなよ」

 「ふっ、そんな事思ってないよ。翔は?」

 「ちょっと遅れるとは言ってたけど、もうすぐ来るはずだよ。先に飲んでよう、今日は二人のお祝いだから!優茉ちゃんは何が好き?」

 「あ、えっと...」

 「優茉はこれにしたら?あんまり強いのはダメだよ」

 「まぁ今日くらいはいいんじゃない?柊哉もそばにいる訳だし、優茉ちゃんに決めさせてあげなよ!束縛の強い男は嫌われるよ?
 フルーツ系が好き?飲みやすいのはこの辺かな?」

 ふふっ、相馬さんの言葉に少し拗ねた顔をする柊哉さんが新鮮で、二人のやり取りを見ているだけでもなんだか楽しい。

 あまりお酒には詳しくないので、おすすめしてもらったベリーニというカクテルをお願いし、テーブルにお料理が運ばれてきた頃、もう一人の幼馴染だという堂上さんも到着した。

 「初めまして、君が柊哉の奥さんか。一時はどうなる事かと思ったけど、無事に結婚出来て良かったな、おめでとう」

 彼は相馬さんとは正反対のタイプで、少しワイルドな感じだけど清潔感があって、こちらもまたとんでもなく容姿が整っている...。
 その上、Dメディックスの副社長さんだったなんて...名刺を頂いて驚いた。

 それにしても、この三人が集まってバーで飲んでいたら、とんでもなく目立つんじゃ...
 でも本人達は全く周りを気にする様子もなく、久しぶりの再会に話題が尽きないようだった。

 おすすめしてもらったカクテルは、ピーチの爽やかな香りがして美味しそう。
 四人揃ったところで乾杯し、食事をしながら和やかに話をする三人は、お互いに心から気を許し合っているのがよく伝わってくる。

 「優茉、少しずつ飲んでよ?それ、甘くても度数高いからね?これも食べる?優茉も好きだと思うよ」と柊哉さんは彼らと話をしながらも、私の事にも常に気を配ってくれる。

 そんな彼を二人は珍しそうに見ていて、ニヤニヤしながら口々に言う。

 「ねぇ、翔。柊哉ってこんなタイプだったっけ?」

 「いや、柊哉のこんな顔見た事ねぇな。さすが長年恋煩いした相手だ」

 「恋煩いって。まぁ、でも二人には心配かけて悪かったな」

 「あの時はマジであのまま一生塞ぎ込むんじゃねぇかと思ったよ」

 「本当だよー、何度もメッセージ送ったのにろくに返信もくれないし。
 でも、二人は結ばれる運命だったんだね!子どもの頃に出会ってから、こうやって再会して惹かれ合ったんだからさ。本当に諦めなくて良かったね、柊哉」

 「そうだな。俺はあの時から優茉の魔法にかかっていたんだろうな」

 そう言いながら、私が着けているクローバー型のネックレスに触れる。

 「お前、本当奥さんの前だとキャラ違うな」

 「もー、ラブラブで見てらんないよ」