四月に入り、春の陽気を感じられる日もあれば、まだまだ風が冷たい日もある。
 今日は薄手のコートを羽織れば十分なほど、日差しがポカポカで暖かい。

 柊哉さんのお仕事が午後からの今日、朝からお互いの母親のお墓参りにきている。
 どちらも命日からは少し遅れてしまったけれど、やっと二人で訪れることができた。

 お母さんにはきちんと報告をして、彼のお母さんにも挨拶をさせて頂き、どうかこれからも見守って頂けるようお願いをしてきた。
 
 どちらも木々に囲まれた霊園の中にあり、ここ最近花粉症の症状がひどい私を気遣い彼が手早く掃除をして、短時間でお参りを済ませた。 
 
 マスクやメガネをして外に出ても目の痒みや鼻水、最近は咳もひどくなっている。

 先日は寝ている時、無意識のうちに目を擦っていたようで、柊哉さんに手を掴まれて目が覚めた。
 すぐに目を冷やす物を持ってきてくれたけれど、瞼が腫れ瞳は真っ赤に充血してしまい、ひどい顔になっていた。

 そんな私を彼はとても心配そうにしていて、毎日一緒に車で出勤し当直の日でも家まで送ってくれ、夜中でも時間が出来れば様子を見に帰ってきてくれるほど。

 前から少し過保護気味だなぁとは思っていたけれど、体調のせいもありさらに度を増してきているような...
 でも大切にしてもらえる事も一緒にいる時間が増える事も嬉しいし、今は体調が良くないので甘えてしまっている。


 この間熱が出てしまった時も、彼が家で診察をし薬を取りに行ってきてくれた。
 そこまで高熱でもなかったのだけど、頭痛がひどく起き上がれなかったせいか、心配で仕事に行けないとギリギリまでそばにいてくれたあげく、彼の実家でお手伝いをされている佐伯さんを呼んでくれていた。

 目覚めるといい匂いがして、リビングに行くと彼女が食事を作ってくれていてとても驚いた。

 でも、一緒に食事をしながら柊哉さんの子どもの頃の話を聞かせてもらったり、好きだったという料理のレシピも教えてもらいとても楽しい時間だった。

 佐伯さんによれば、彼はお母さんを亡くしてから家ではあまり感情を見せなかったようで、私とのやり取りをみて驚いたそう。

 「柊哉くん、優茉さんの前ではあんなに優しい顔で笑うのね」と、とても嬉しそうに優しい笑顔で彼の事を話す佐伯さんは、まるで本当のお母さんのようだった。

 帰ってきた彼には、ちゃんと寝ていないとダメと叱られてしまったけれど、色んなお話が出来てなんだかとても癒される時間だった。