「私たちにとっては...娘が命懸けで守った優茉ちゃんが笑顔でいてくれる事が、生きる希望だったんです。
優介さんに聞いた時は、本当に驚いたわ。まさか結婚相手が、あの時の息子さんだなんて。
でも、これもきっと娘が繋いだ縁なのかもしれません。二人が本当に愛し合っているのなら、優茉ちゃんが幸せなら、私たちは見守ろうと決めたんです」
おばあちゃん...。本当はどんな反応をされるのか、とても不安だった。もしも二人を悲しませることにもなってしまったらって...。
でも、私が笑う事で、幸せになる事で喜んでくれる人がいるんだよね...
私本当にバカだ。今までそんな事にも気がつけなかったなんて...。
「おばあちゃん、ありがとう」
「優茉ちゃんが幸せなら、きっとお母さんも喜んでいるはずよ。
それとこれ、この間置いて行っちゃったでしょう?改めて、受け取ってくれるかしら?」
あっ...、そうだった。この間は動揺して、置いて行っちゃったんだよね、このネックレス。
「それは?」
柊哉さんにもこのネックレスの事を話すと、とても素敵だねと微笑んでくれた。
「柊哉さん、あなたの事は覚えているわ。娘の葬儀の時、とても辛そうな表情で俯いたままだったから...心配だったの。
それがこんなに立派になられて...驚いたわ。でも、本当に良かった」
優しく微笑んで言うおばあちゃんの言葉に、柊哉さんは一瞬言葉を失ったようだった。
「...ありがとう、ございます」
なんとか言葉を搾り出したようにそう言った彼の切なげな表情に、ズキンと胸が痛んだ。
「どうかこれからは、優茉ちゃんの事も自分の事も大切にして下さいね」
その言葉に我慢していた涙がぽたっとこぼれ落ちて、慌ててそれを拭った。
その後は、お互いの仕事の話や結婚式の話題で、和やかにひと時を過ごすことができ本当に安心した。
「優茉ちゃんも柊哉さんも、いつでも顔見せに来てちょうだいね。楽しみに待っているわ」
帰り際、おばあちゃんの言葉にまた涙腺が緩みそうになった私の肩を優しく抱いて、代わりに「ありがとうございます」と彼が笑顔で応えてくれた。
院長にもお礼を伝えると「あとは二人でよく話し合いなさい」と穏やかな表情で微笑んでくれ、タクシーを見送ったあと私たちも車でマンションへと戻ってきた。