「優茉は、その事実を知っても、彼と結婚したいかい?」

 「私は...、とても驚いたし、きっと、結婚なんて許されないって思った。どうしたらいいのか、分からなかったの。
 でも...、その事実を知った今でも、彼に会いたいし、愛してる気持ちは、変わらない」
 
 「だったら、二人でよく話し合ってみなさい。お父さんは、君たちが幸せになってくれるなら、反対はしないよ。
 二人の気持ちが変わらないのなら、怖がらず彼方のお父さんにもおじいちゃんやおばあちゃん達にも、その事をきちんと話してみなさい。
 彼に非がある訳ではないし、きっとお母さんだって...、優茉が幸せならそれで良いと思っているはずだよ」

「お父さん...、あり、がとう。ちゃんと、柊哉さんと話してみる」


 私は昔から、お父さんにはあまり好かれていないのだと思っていた。厄介な存在なのかなぁと。
 だけど、違ったんだね。誰よりも私の事を、そしてお母さんの事を愛していたんだ。

 大人になった今なら、心から愛している人ができた今なら、お父さんの気持ちも理解できる。
 もっと早く、ちゃんと話をするべきだったのかもしれない...。


 そして、私の心は決まった。

 ちゃんと彼と話をしよう。この事実から、目を逸らさずに。

 怖いけど、逃げたくない。彼との幸せを、諦めたくない。

 すぐにでも会いに行きたいけれど、二日後に大事なオペを控える彼の心を乱すわけにはいかない。
 チャンスはきっと、オペが終わった後。次の日にはカナダに行ってしまうから。

 不安と焦りで、そわそわと落ち着かない二日間をなんとかやり過ごし、オペが終わったであろう夕方頃、彼にメッセージを入れた。

 "お話したい事があるので、会えませんか?"そんなメッセージに、"夜には帰れるからマンションで待っていてほしい"と返事が来た。
 良かった...。もう会えないと言われたらどうしよう...そんな事を考えて、この短いメッセージを送るだけでも手が震えた。

 そして、彼に会いに行く前におばあちゃんとおじいちゃんに事実を打ち明けると、二人ともすごく驚いて言葉を失っていたけれど、私が幸せになれるなら何も言うことはないと、想いを応援してくれた。
 
 二人の愛に背中を押してもらい、私は約一ヶ月ぶりに彼のマンションを訪れた。