「それ、何作ってるの?」
こっそり抜け出してきたせいか、バツが悪そうな顔をしていた彼女だが、俺の質問にパッと笑顔を見せてくれた。
「これね、四葉のクローバーなの。同じ部屋のお友達が手術するから、お守りに渡すの!」
完成している物を見本にしながら、小さな手で一生懸命に折っている。誰かの為に一生懸命になっている彼女が眩しくて...目が離せなくなった。
どのくらいだろうか、そのまましばらく彼女を見つめていると、やがて完成したようで四葉のクローバーを持った彼女が顔を上げニコッと笑った。
「これ、お兄ちゃんにあげる」
「え?でもそれ、友達に渡すお守りでしょ?」
そう言うと、なぜか彼女は俺をじっと見つめ、少しの沈黙のあと遠慮がちに口を開く。
「お兄ちゃん、寂しそうだから...。これを持ってるとね、病気も治って幸せになれるんだよ。お姉さんが教えてくれたの。だから、お兄ちゃんにもあげる」
俺が、寂しそう...?
そっか、そうなんだ...
今まで考えたこともなかった自分の奥底に眠る感情を、彼女に教えてもらった気がした。
差し出された四葉のクローバーを受け取ると、じわじわと胸の奥から暖かいものが溢れ出る感覚がする。
...なんだろう、この感覚は。
今まで経験したことのない感覚に戸惑っていると、彼女は申し訳なさそうにこっちを見ていた。
「いらなかった?」
彼女の問いかけにハッとし、慌てて首を振ってお礼を伝える。
「ありがとう。大切にするよ」
すると、ぱぁっと笑顔になり「よかった!」と安心した表情を見せた。