柊哉side

 腕の中でスースーと穏やかな寝息をたてる優茉の頭を撫でながら、思わずため息が漏れる。

 ベッドに転がり彼女を抱きしめると、すぐに意識を手放したので少し心配になったが、次第に寝息が聞こえてきて安心した。

 しかし、それと同時に後悔も込み上げる。

 彼女が戸惑っているのを分かっていながら、それでも俺を受け入れようとしてくれた健気な姿に、完全に理性が崩れてしまった。
 オペ後でアドレナリンが出ているのも自覚していたのに、迫り上がってくる強い昂りをとうとう抑える事が出来なかった。

 本気で嫌がっているようには見えなかったが、時折見せた小さな抵抗は、本当はどうだったのだろう...。
 今更、優茉に嫌われるような事をしていなかっただろうかと不安になったが、一つになった時の彼女の表情に偽りはなかったと思う。

 俺も、今まで感じた事がないほどの幸福感に包まれたことは、はっきりと覚えている。

 腕の中にいる優茉の規則正しい寝息を聞いているうちに、気づけば俺も意識を手放していた。




 朝日が入り込んだ部屋で、眩しさを感じ目を開ける。...そうだった、昨日はカーテンも閉めずに寝てしまったんだ。

 それどころか、夕食も食べず、シャワーも浴びずに朝を迎えてしまった。

 疲れさせてしまったせいか、優茉はまだぐっすりと眠っていて起きる気配はない。今日が土曜日でよかった...。

 昨日ご飯も食べずにベッドで過ごさせてしまったお詫びに、朝食は優茉が好きな物を俺が作ろう。

 何も身につけずに眠っている彼女に毛布を掛け直し、昨日脱ぎ捨てた衣類を拾いシャワーを浴びる。

 冷蔵庫にある野菜を使ってスープを作り、買い置きしてあったバゲットでフレンチトーストを作っていると、寝室の方からバタンッという音が響いてきた。

 ん? まさかベッドから落ちた?

 一旦火を止め急いで寝室に駆けつけると、ドアを開けた途端「きゃっ」と短い悲鳴が聞こえた。
 優茉の姿を探すと、ベッドサイドの床にぺたんと座り込んで慌てて身体に毛布を巻き付けている。

 「どうした?大丈夫?」

 「は、はい。大丈夫、です。ちょっと、転んじゃって...」

 それって、まさか...

 「足、力入らない?ごめん、俺のせいだな」

 手を貸そうと近づくと、慌てて後退りする彼女。

 「だ、大丈夫です!服、着たいので、あの、部屋の外に...」

 「あぁ、ごめん。もうすぐ朝ごはん出来るから、シャワー浴びておいで?」

 「あ、ありがとう、ございます」