鍵をあけて玄関に上がった途端に手を引かれ、気づけば柊哉さんの腕の中。押されて背中が壁についたと思ったら、次の瞬間には顎をすくわれ唇が重なっていた。
いつも優しい彼らしからぬ荒々しいキスに、息が出来ない。
「っ、んぅ...」
熱い舌で唇をなぞられるとぞくっと身体の奥が震え、苦しくなり離れようとしたけれど、壁に押し付けられていて逃げ場がない。
堪らず口を開けると、すかさず彼の舌が入ってきて、私の舌を絡めとる。驚いて身体がビクッと反応すると、腰に巻き付いた腕にぐっとさらに引き寄せられた。
しんと静まり返った玄関にくちゅっ、ちゅっと淫らな水音だけが響いて、脳を甘く犯し始める。
だんだんと力が入らなくなってくるのを感じ、彼の服をぎゅっと掴むとようやく唇が解放され、酸素を取り込もうと忙しなく肩が上下する。
そして、額を合わせたままの距離で放たれた言葉は...
「優茉が欲しい」
その低く甘く掠れた声は、ズンッとお腹の奥の方に響く感じがした。
「ダメ?」
顔を覗き込まれ向けられる視線は、情欲の熱を帯びていて、まるでその瞳に吸い込まれたように身体が動かない。
「優茉、嫌なら言って?今ならまだ止められる」
直接鼓膜に響く甘く切ない声に、私は操られたように首を横に振っていた。
「嫌...じゃ、ない、です」
振り絞るように、やっとのことで発した私の言葉を合図に再び唇が重なり、耳、首筋、鎖骨へと優しいキスを落としながらコートを脱がされ、腕を彼の首へとまわされる。
「つかまって?」
耳元で囁かれた声にゾクっとした途端、身体が浮き上がる。
「きゃっ」
えっ?こ、これって、お姫様抱っこ?
もしかして、このままベッドに...?
大した経験がない私でも、この後どうなるかくらいは分かる...。でも、まだシャワーも浴びてないし、ご飯もまだだし、今はまだ七時前だし...
嫌じゃない。求められることは嬉しいし、もちろん私も応えたい。でも、突然のことに心の準備が...。
「あ、あの、柊哉さん?」
遠慮がちに声をかけてみても、返ってくるのは言葉ではなくキスだけ。