柊哉side

 ハッと目が覚め映し出された景色に一瞬、自分がどこにいるのかわからなかった。
 二秒後には、あぁ日本に戻ってきたんだったなと思い出した。そして次の瞬間には「またこの夢...」つい口から言葉が漏れていた。

 帰国して、病院近くのマンションの部屋に着いたのは数時間前。荷物や段ボールだらけの部屋で、片付けよりもまず睡眠を選んだが、二時間ほどで目が覚めてしまった。

 もう夢の話なのか現実にあった事なのかもわからないほど、何度も何度もみる夢がある。そして、毎回必ず同じところで目が覚める。

 夢でみすぎたせいで曖昧になってきているが、確かに子どもの頃にあった現実の話のはず。

 俺の心を大きく揺さぶった出来事。
 
 すっかり目が覚めてしまい、空っぽの冷蔵庫から水を取り出して飲み干す。
 スーツケースに手をかけ、荷物を整理しながら、十一歳のあの日のことを考えていた。