柊哉side
「結婚の許可なんて...私にはそんな資格はありません。優茉には親らしい事など何一つしてあげられなかった。優茉が幸せなら、私は何も言う事はありません」
目を少し潤ませながら、俯きがちに頭を下げる彼女のお父さん。
...つい最近、同じようなセリフを聞いたばかりだ。
優茉のお父さんも、きっと俺の父さんと同じように一人悲しみに耐えながら、がむしゃらに働いていたのかもしれない。
あまり口数が多いタイプではないようだし、異性の親という事もあってか優茉とは上手くコミュニケーションが取れていなかっただけなのだろう。
彼女の幸せを願う言葉やその表情からは、娘を大切に想ってきた父親の思いが伝わってきた。
隣に座る優茉を見ると、彼女も目に涙を溜めながらも安堵の表情を浮かべていた。
そこに一際明るい声が響き、少し湿った空気を一蹴してくれる。
「はぁいお待たせ!優茉ちゃんの大好きな白玉団子入りのお汁粉よ!」
その声に、彼女の表情も明るい笑顔に変わる。
きっと彼女のおじいちゃんとおばあちゃんも、優茉の事を本当に大切に想いたくさんの愛情を注いできたんだろう。
無償の愛とはどういう物かを、教えてもらったようだった。
家族の温かさも親が子を想う気持ちも、俺が忘れていた感情を、優茉のおかげで思い出す事ができた。
彼女に出会っていなければ、こんなに誰かを愛おしいと想う事はなかっただろう。こんなに温かく幸せな気持ちになる事も、きっとなかった。
その後、家族で毎年行っているという近くの神社にみんなで初詣に行き、たくさんのお土産を持たせてもらい俺たちは帰路に着いた。
帰り際、優茉とおばあちゃんがキッチンにいる時、彼女のお父さんに呼ばれ廊下へ出た。
「優茉は早くに母親を亡くして、幼い頃から周りの顔を伺っては無理にでも笑って、一切わがままや甘えを言わない子でした。
それに気づいていながら、私は何も出来ず仕事に逃げました。年々母親に似てくる優茉を見ているのも、辛かったのかもしれません。
逃げた私が言う事ではないのは承知ですが、香月さんには優茉が素直な気持ちを伝えられるような環境にしてあげて欲しいんです。
どうか優茉のこと、よろしくお願いします」
そう深々と頭を下げられ、俺は改めて心に誓った。
優茉を大切に想ってきたこの人達のためにも、絶対に悲しませるような事はしない。必ず俺が幸せにし続ける。
そして帰り道、助手席で眠ってしまった彼女の寝顔はとても穏やかで、より一層の愛おしさが込み上げてきた。
「結婚の許可なんて...私にはそんな資格はありません。優茉には親らしい事など何一つしてあげられなかった。優茉が幸せなら、私は何も言う事はありません」
目を少し潤ませながら、俯きがちに頭を下げる彼女のお父さん。
...つい最近、同じようなセリフを聞いたばかりだ。
優茉のお父さんも、きっと俺の父さんと同じように一人悲しみに耐えながら、がむしゃらに働いていたのかもしれない。
あまり口数が多いタイプではないようだし、異性の親という事もあってか優茉とは上手くコミュニケーションが取れていなかっただけなのだろう。
彼女の幸せを願う言葉やその表情からは、娘を大切に想ってきた父親の思いが伝わってきた。
隣に座る優茉を見ると、彼女も目に涙を溜めながらも安堵の表情を浮かべていた。
そこに一際明るい声が響き、少し湿った空気を一蹴してくれる。
「はぁいお待たせ!優茉ちゃんの大好きな白玉団子入りのお汁粉よ!」
その声に、彼女の表情も明るい笑顔に変わる。
きっと彼女のおじいちゃんとおばあちゃんも、優茉の事を本当に大切に想いたくさんの愛情を注いできたんだろう。
無償の愛とはどういう物かを、教えてもらったようだった。
家族の温かさも親が子を想う気持ちも、俺が忘れていた感情を、優茉のおかげで思い出す事ができた。
彼女に出会っていなければ、こんなに誰かを愛おしいと想う事はなかっただろう。こんなに温かく幸せな気持ちになる事も、きっとなかった。
その後、家族で毎年行っているという近くの神社にみんなで初詣に行き、たくさんのお土産を持たせてもらい俺たちは帰路に着いた。
帰り際、優茉とおばあちゃんがキッチンにいる時、彼女のお父さんに呼ばれ廊下へ出た。
「優茉は早くに母親を亡くして、幼い頃から周りの顔を伺っては無理にでも笑って、一切わがままや甘えを言わない子でした。
それに気づいていながら、私は何も出来ず仕事に逃げました。年々母親に似てくる優茉を見ているのも、辛かったのかもしれません。
逃げた私が言う事ではないのは承知ですが、香月さんには優茉が素直な気持ちを伝えられるような環境にしてあげて欲しいんです。
どうか優茉のこと、よろしくお願いします」
そう深々と頭を下げられ、俺は改めて心に誓った。
優茉を大切に想ってきたこの人達のためにも、絶対に悲しませるような事はしない。必ず俺が幸せにし続ける。
そして帰り道、助手席で眠ってしまった彼女の寝顔はとても穏やかで、より一層の愛おしさが込み上げてきた。